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本項《ピアノの難曲》は、ピアノ曲のなかから難易度の高い曲を抄録したものである。


概要

難易度には、表現や解釈の難易度も含まれ、本欄でピアノ曲とは、19世紀以降については、ピアノのためにのみ作曲された作品のことを指すが、それ以前の作品の場合は、チェンバロやオルガンなど、元来別の鍵盤楽器ために作曲された作品のうち、そのままのかたちで、あるいは後世の編曲によって、現在は一般的にピアノ曲と認識されている作品も含める。あくまでもピアノ業界を唸らせた作品に限られている。(この他は難曲の歴史演奏不可能の作品を参照のこと。)
これらのように、ピアノ曲に「転用」された初期鍵盤楽器のための作品は、演奏技巧上の要求だけでなく、それらの楽器とピアノの構造や形状・性能の違いから、ピアノによる演奏が高度に難しくなる例がある。たとえばチェンバロ作品においては、当時の2段鍵盤式チェンバロを意識して作曲された作品の場合が特にそうである。
また、もともとピアノのために作曲された曲の場合では、譜面が視覚的に複雑なために、実際以上に難しく見える作品や、あるいはいっそう演奏に困難をともなう作品がある。戦後前衛の時代になってこの問題が一層表面化したが、これを松平頼暁氏は「新たなタイプのヴァーチュオシティー」と形容した。
なお演奏技術が格段に進んだ現在、以下の曲の中にはさほど技巧的には難しくないとされる作品も含まれている。

18世紀以前

J.S.バッハ (バロック音楽)

バッハの曲の難しさは、対位法の表現や両手ともに伴奏に徹することが少ないなどの、複雑さによるものが大きい。また、オルガンのために作られた曲は、足鍵盤で演奏する声部があるため、元の楽譜の通りに、忠実に演奏することは難しい。
  • 平均律クラヴィーア曲集
    この曲は当時ピアノも平均律も存在せず、元来他の楽器と音律による曲である。
  • フーガの技法
  • 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調
    ふたつの平均律クラヴィーア曲集と並ぶバッハの代表的なチェンバロ曲。
  • ゴルトベルク変奏曲
    グレン・グールドの演奏があまりにも有名。
オルガン用の曲
  • フーガ ト短調(別名、小フーガ)
    大きな跳躍を伴ったトリルなど。
  • トッカータとフーガニ短調 BWV565

ベートーヴェン

  • ピアノソナタ第23番『熱情』
    フィナーレ、終結近くの突然の和音連打とその後の加速。スピード感だけでは浅い演奏になってしまう難しさが付きまとうが、深みを与えようとする演出が切れ味を鈍らせるなど、方向性の比較的明確な曲の割りには単純ではない。
  • ピアノソナタ第29番『ハンマークラヴィーア』
    すべての楽章の反復も含めて要求どおりに演奏すると、50分近くをなんなんとする、力作にして大作。技術力・集中力・構成力といった技術的側面においてのみならず、まずは楽曲の理解が非常に困難とされる。作曲家または指揮者のごとき力量を要求され、一方では体力などの基礎的資質まで必要。非常に広い意味での演奏力が問われる作品。ルービンシュタイン曰く「ピアニストにとって壁のような存在」
  • ピアノソナタ第32番
    激しい1楽章と深い2楽章。この二つを完全なバランスで演奏する事だけでも至難。2楽章は、いわばベートヴェンの悟りの境地。この精神の深みを人為的表現とは無縁の自然体で表現可能なピアニストは、巨匠と言われる演奏者の中にも数少ない。どこまでも簡素な音の連なりゆえに、表現に心を砕けばたちまち流れを阻害し、流れに身を任せればたちまち浅くなってしまう。
  • ディアベリ変奏曲
    長大な作品の緊張感を持続し、またドラマティックな表現を可能にするためには並大抵ではない強い表現力が不可欠。

19世紀

シューマン

  • トッカータ
  • クライスレリアーナ
  • 交響的練習曲
  • 謝肉祭
  • ピアノソナタ第3番 「管弦楽のない協奏曲」
  • 幻想曲

ショパン

  • 12の練習曲 Op.10
    • 第1番 ハ長調
      右手のアルペッジオの練習曲。手の小さい人には特に困難とされる。
    • 第2番 イ短調
      半音階の旋律を3,4,5指で弾く。運指的に困難であるため、手首の脱力を意識して弾かないと、最後まで弾き切るのは困難である。
    • 第4番 嬰ハ短調
      両手とも大変急速、かつ半音、一音の細かい動きとオクターブを超える分散和音の動きが交互に現れることで切替に困難を来す。
    • 第7番 ハ長調
      右手の3度と6度の練習曲。余り知られていないが難しい。
  • 12の練習曲 Op.25
    • 第6番 嬰ト短調
      右手の3度の練習曲。曲集中、最も難しい曲の一つである。
    • 第8番 変ニ長調
      右手の6度の練習曲。
    • 第9番 変ト長調 『蝶々』
      軽やかに、綺麗に表現するのはそれなりのテクニックを要する。そのため、あまり言われてはいないが、「蝶々が蝙蝠になる」と言われることもある。
    • 第11番 イ短調 『木枯らし』
      左手のメロディと右手の広域のアルペジオからなる難曲。
  • 24の前奏曲 Op.28
    • 第1番 ハ長調
      分散和音とメロディーの両立を求められる。
    • 第3曲
      独自の和声配置により、4と5の指の広がりと滑らかなレガートを要求される。3で代用できる所を敢て4で弾かせる所が、ショパンのピアノ書法の開花を予感させる。
    • 第8曲
      1番と同じだが、メロディーが主に1の指で要求される。
    • 第16曲
      右手の速いパッセージに、スクリャービンのような左手の激しい和音跳躍を要求される。
    • 第19曲
      2オクターブの幅広い分散和音を高速で演奏する。これも3番と同じくショパン独特のテクニック。
    • 第24曲
      終始左手が3の指を中心とした広い分散和音を要求される。右手に3度の急速下降の和音もある。
  • ピアノソナタ第2番
    • 第2楽章
      早いテンポでオクターブの和音を弾かないといけないので、手が小さい人には、困難である。
  • ピアノソナタ第3番
    • 第4楽章
  • バラード 第1番
    • 変ホ長調の第2主題のオクターブのスケール、締めくくりのコーダ。
  • 第4番
    • クライマックスの両手アルペジオ〜和音連打、パウゼを経てのコーダ(右手の3度の半音階スケール中心の高度な技術)。
1番・4番共に、テクニック、表現力、体力を大きく問われる。
  • スケルツォ 第3番・第4番
    どちらも技術面もさることながら、構成力が問われる。
  • ポロネーズ
    • ポロネーズ第5番
    • 英雄ポロネーズ
      中間部・左手のオクターヴ連打は有名だが、その部分が反復される際に、弱音での演奏が要求される個所を含む。
    • 幻想ポロネーズ
      技巧的な面もさることながら、内声をどう扱い、いかにして曲の持つ深い憂愁を表現できるか演奏者の資質を問われる晩年の傑作。
  • アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
  • 演奏会用アレグロ
    最初は非常にシンプルだが、徐々に激しさと共に強烈なオクターヴ連打とそれに絡む複雑なパッセージが現れ、最後まで難技巧を持続させる。聴衆に演奏技巧の華やかさと難しさを伝える構成で、ショパンには珍しい、敢てそれを意図して作られた作品。技巧的にはショパンの作品中最難曲とも言われる。
  • 舟歌
    ショパンの傑作の一つであり、演奏には技術と共に旋律を歌わせるなどの表現力を要求される。

リスト

  • 超絶技巧練習曲
    この曲集は3回にわたり改訂されており、最も難しいとされる第2稿(現在広く知られているのは第3稿)はジャニス・ウェッバーとレスリー・ハワードの二人が録音を残している。
  • パガニーニによる大練習曲
    中でも第3曲ラ・カンパネッラが有名。
  • パガニーニの主題による超絶技巧練習曲
    上のパガニーニによる大練習曲よりも前に作曲され、難易度はこちらの方が高いが演奏効果はパガニーニによる大練習曲の方が上なのであまり演奏されない。楽譜通り演奏するのは不可能とされる。第3曲「ラ・カンパネッラ」は、「大練習曲」にはない旋律が入っている。2オクターブの有り得ない和音などがある。さらに第4曲「アルペッジオ」の第2版は三重和音の高速アルペジオや両手で10度の連打などとてつもない課題を提示している。この作品は三度しか録音されていない。
  • ハンガリー狂詩曲
    • 第2番 嬰ハ短調
      後半、フリスカのラストの左手の大きな跳躍を伴った右手の急速な上昇階段(vivaceの速度で14+7連符を3オクターブ駆け上がる)。左手はフリスカに入ると延々跳躍が続くので、速さと正確さが問われる。前半、ラッサンの嬰ト、イ音の連打の直前の両手のパッセージも曲者。終盤は cadenza ad libitum(カデンツァは演奏者の自由とするの意)の指定であるが、マルカンドレ・アムランは主題を二重に、半音ずらして同時に濁り無く奏するというカデンツァを披露した。他者にはおいそれと真似できない離れ業と言える。
    • 第6番 変ニ長調
      16分音符の休みない連続オクターブでメロディを奏でるため、うまく脱力ができていないと疲れる上に綺麗に弾けない(特に最後は速度がPrestoまで上がるため、全体のバランスを考えて速度を設定しないといけない)。両手の大跳躍もある。
  • メフィスト・ワルツ 第1番
    オーケストラからの編曲。最初の和音が大きく、手の小さい人は、指が他の鍵盤を叩いてしまう。前半の両手グリッサンドや中盤の重音トリル、後半の右手の大きな跳躍など、至る所に様々な華やかな技巧が駆使されている曲。
  • ピアノソナタ ロ短調
    単一楽章のピアノソナタ。演奏時間が長く表情の大きな変化と小さな変化を絶えず繰り返し、それでいて確実にドラマは進んでいく。この徐々に聴き手を引き込む表現が非常に困難であり、多くは場面場面で聴かせるだけに終わりがちである。曲全体を理解し、演奏を常に抑制する強い精神も必要。
  • 半音階的大ギャロップ
    ショパンの練習曲10-2に似ているところがあり、3・4・5指の困難な運指で半音階のメロディーを駆け抜ける。リストがアンコールでよく弾いたといわれている。
  • バラード 第2番
    10度の和音や半音階等の技巧が怒涛のように現れ、劇的な演奏効果をもたらすが、リストの作品としては比較的弾きやすい部類の作品である。
  • ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」(巡礼の年 第2年より)
  • 「巡礼の年 第3年」
    中でも「エステ荘の噴水」は「最初の印象主義音楽」とも言われ、ラヴェルの「水の戯れ」やドビュッシーの「水の反映」に影響を与えたとされている。
  • ノルマの回想
  • ドン・ジョバンニの回想
  • スケルツォとマーチ
  • スペイン狂詩曲

ブラームス

ブラームスのピアノ曲は、技術的要求の割に演奏効果が薄く、しかも聴き手にとって晦渋な印象の楽曲が多い。これは、ブラームス自身がピアニストとしての高い技術を持ちながら、技巧を誇示するような音楽を嫌っていたからだと言われている。このため、ブラームスのピアノ曲は弾き手と聴き手の双方にとって難曲であることがしばしばである。このような意味の「難曲」は、20世紀前半までの(特にドイツ語圏の)作曲家に間々見られる。なお、独奏曲ではないが、2つのピアノ協奏曲は、ロマン派でもっとも難しい演奏技術を必要とする協奏曲として知られる。
  • ピアノソナタ第3番
  • パガニーニの主題による変奏曲
    もともと芸術的練習曲として構想され、技術力を誇示するような側面を与えようとする意図がブラームスにあったことから、彼らしい深い情緒に加え華麗なテクニックを披露する異色の曲として仕上がった。主題はリストによる「パガニーニによる大練習曲」第6曲「主題と変奏」と同じく「奇想曲24番」であり、リストに師事したタウジヒのために書かれた。
  • ピアノ協奏曲第1番
  • ピアノ協奏曲第2番

バラキレフ

  • イスラメイ
    オクターヴのグリッサンド等、独特な難技巧を要求される。コーダのオクターブ演奏は、ほとんどのピアニストがテンポを落とすことで有名。
  • トッカータ
  • ソナタ ロ短調

チャイコフスキー

  • ソナタ ト長調 Op.37

ムソルグスキー

  • 展覧会の絵
「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」の中間、「リモージュ」「キエフの大門」が特に描写力、構成力を求められる。

アルベニス

  • イベリア
    3段譜も部分的に使われるなど、華麗さとボリューム感を併せ持ち、リズム的にも複雑。ドビュッシーが非常に崇拝した。

ビュッシー

  • 「ピアノのために」
  • 「映像」 - 『水の反映』
  • 「映像」- 『金色の魚』
    トレモロ奏法は人によって個人差が出るために、冒頭のテンポ設定からして倍以上の遅さを選択するピアニストもいる。
  • 「前奏曲集 第2巻」 - 『花火』
    大量のグリッサンドが含まれている。前奏曲集第2巻の終曲。
  • 12の練習曲
    「半音階のために」の運指とレガート奏法の両立は非常に困難。「オクターブのために」もインテンポで弾ききるピアニストは少ない。
  • 「喜びの島」
    ドビュッシーの作品の中でもっとも華やかと言われる作品。大量のトリル、高速な指の5→1移動、左右の手の長い交差など。

グラナドス

  • ゴイェスカス

スクリャービン

「左手のコサック」と呼ばれた彼の作品は、左手に2オクターブを超える難しい動きを要求される曲が多くある。また左右バラバラの様々な数の連符を織り込んだクロスリズムが複雑である。
  • 12の練習曲 作品8
  • 8つの練習曲 作品42
    有名な5番嬰ハ短調は、愁いを帯びた美しいメロディとともに、ピアニスティックな難技巧が駆使された傑作。
  • ピアノソナタ第6番
  • ピアノソナタ第7番「白ミサ」
  • ピアノソナタ第10番(「トリル・ソナタ」)

ラフマニノフ

  • 楽興の時
  • 10の前奏曲 Op.23
    • 第2曲 変ロ長調
  • 絵画的練習曲「音の絵」
  • ピアノソナタ第2番
    初版と1931年版の二つがあり、特に初版はラフマニノフ独特の分厚い房状和音の連打が非常に激しく難度が高いが、それ故に音楽性に欠ける演奏を誘発しやすい。
  • ピアノ協奏曲第3番

ゴドフスキー

  • 「こうもり」によるパラフレーズ
    ヨハン・シュトラウス2世による『こうもり』のピアノ独奏用編曲。ゴドフスキー自身、手が大きくなかったため、リストやラフマニノフのように10度や11度の同時打鍵を要求する曲はほとんどと言って良いほどない。しかしこの作品ではすべてオクターブ奏で四声部を同時に演奏し、ピアノの音域中6オクターブが一斉に鳴り響き、劇的な演奏効果を生む部分がある。読譜が非常に易しいのに比べ、演奏の実施が困難を極める曲の代表と言える。この作品をさらに超える難易度のパラフレーズに「芸術家の一生」がある。

20世紀

エリック・サティ

  • ヴェクサシオン(嫌がらせ)
    1分程度のフレーズを、ただ840回繰り返す曲。精神的、体力的に困難な異色の難曲。実際の上演では18人以上のピアニストを募集し1人1時間ほどを弾き、切れないように次のピアニストに引き継いでもらう。ドイツなどで現代音楽のデモンストレーションや運営予算が充分でない場合に良く取り上げられる。時々趣向をかえて、チェレスタやオルガン版で演奏される場合もある。

ラヴェル

  • 水の戯れ

  • 「洋上の小舟」は不規則な数の流れるようなアルペジオとトレモロを要求する。特に「道化師の朝の歌」の超高速同音連打と3度の重音グリッサンドが難しく、かつ演奏効果も鮮やかである。
  • 夜のガスパール~^難曲揃いの曲集だが、中でも終楽章の「スカルボ」は技術的要求の高さと連続技の要求で有名。作曲者はヴラド・ペルルミュテールとの審議を経て、いくつかの難所を変更したことが死後明らかになった。
  • クープランの墓
    「トッカータ」の途切れることの無い高速の連打。詳しくはクープランの墓の項およびトッカータの項を参照。

ストラヴィンスキー

  • 「ペトルーシュカからの3楽章」
    有名なバレエ音楽からの抜粋・編曲。原曲がもともとピアノ協奏曲として発想されていたために、この曲も非常にピアニスティックに編み直されている。一部、左手の親指で内声を奏でつつ、小指-中指、薬指-人差し指で高速な重音トレモロを「記譜上では」要求されているとみなされる部分がある。手の構造の生理学上演奏不可能と評されるが、ほとんどのピアニストはうまく右手の助力を得てクリアしていることが多い。

バルトーク

彼が書いた多くのピアノ作品の特徴として、本人もリストの系譜に連なる名ピアニストであったことから技術的なパッセージも少なくない上に、打楽器的なリズム重視の書法や密集音による音塊を多用している点が上げられる。演奏にはテクニックに加えパワフルさが要求される。
  • ピアノソナタ
  • 戸外にて

プロコフィエフ

  • トッカータ
    激しい重音の連打と3オクターブの跳躍、手の組み替えを要求される。特に中間部の見せ場でもある右手の3度重音の音階の中での旋律の強調が難易度が高い。
  • ピアノソナタ 特に第6〜8番の難易度が高い。
  • 悪魔的暗示

メトネル

  • ピアノソナタ 第7番「夜の風」
    演奏に30分以上かかる大曲。複雑なポリフォニー構造を取っており、演奏者に極めて高度の技巧を要求する。また表現的な面でも大変難しい作品とされている。これ以外のソナタも総じて難易度は高い。

ソラブジ

  • 「子犬のワルツ」によるパスティーシュ(初版)
    ショパンの原曲による幻想的な作品。休みなく繰り出される協和音と不協和音をほぼ濁りなく奏し、その中に埋め込まれた主題を引き出すのは至難。譜読みも大変難しい。この作品の世界初演はアメリカの作曲家のネリー・ブルース、世界初録音はマイケル・ハーバーマンが行った。余談ではあるが、ショパンの同曲に基づく編曲はアレクサンデル・ミハウォフスキ、マックス・レーガー、レオポルド・ゴドフスキー、イジドール・フィリップらが発表しており、その数は10を越える。ソラブジ編曲にも1922年の初版と1933年の第2版がある。これらをすべて網羅したアルバムをフレデリック・ウッレーンが発表している。
  • Opus Clavicembalisticum
    ソラブジの没後に封印が解かれ、作曲者とジェフリー・ダグラス・マッジ以外ではソラブジ財団の指名によりジョン・オグドンがロンドン初演した。総演奏時間が4時間に及ぶ大作であり、フレージングの異なる九声を同時に捌く等、技巧、表現に加えて体力も必要な難曲。最終四ページは、作曲者も唸ったほど事実上不可能のパッセージがあることで有名。

シフラ

  • 熊蜂の飛行
    ニコライ・リムスキー=コルサコフの原曲をピアノ独奏に編曲したもの。両手の1の指でメロディー、5の指でメロディーの1オクターブ上下を超高速マルテラートで処理しつつ、残りの指に伴奏が房状和音で埋め込まれている。いわゆる「真っ黒な譜面」の一つ。かなりの難曲である。音符の量にたいしてテクニックは単純なのでアマチュアのピアニストでも挑戦することがある。
  • 剣の舞
    アラム・ハチャトゥリアン作曲のバレエ音楽の編曲物。冒頭から、左手は細かく変わる上に広い跳躍が延々と続く。中間部では、左手のみで主旋律を奏でつつ伴奏という、高度な声部の弾き分け技術を要すと共に、その間右手はというと5〜7連符の雨嵐で、両手のとてつもない跳躍とオクターブのグリッサンドが待ちかまえ、そして冒頭のメロディに戻る。まさに、シフラの名に恥じない編曲となっている。
  • トリッチ・トラッチ・ポルカ
    ヨハン・シュトラウス2世作曲のポルカをピアノ独奏に編曲したものである。曲の全体像は、簡単に言えば第一主題の変奏曲風である。この曲は、もともと速い曲であるにもかかわらず、冒頭から最後まで、とても弾くことが困難な速すぎるパッセージ、オクターブの連続、3度の連続、そして最後には明らかに指定されたテンポでは弾くことが難しい左手の跳躍といった多彩な超絶技巧が続いている。だが、多彩なのは超絶技巧ではなくでなく、冒頭は軽くどこか遊ぶような感じ、中間部は盛り上げたり転調したりして曲に変化を持たせる、そして最後は派手に終わるといった、曲の色合いも多彩である。この曲はシフラの編曲ものでは、上記の「熊蜂の飛行」、「剣の舞」に比べては、あまり知られていない方ではあるが、それに負けず劣らず、超絶技巧そして音楽性を持った一曲と言えよう。
  • ハンガリー舞曲 第5番バージョン2
    ヨハネス・ブラームス作曲の同曲をピアノ独奏に編曲したものの二作目である。最初は主旋律をオクターブで演奏しながら、内声の形で伴奏が埋め込まれている。それが演奏が進むにつれて音域が広がり、左手にシフラならではの凄まじい跳躍が現れる。初めて演奏を聞くと、独奏にしては音数が多すぎ、連弾にしてはプリモ−セゴンド間での音域の接近・手の交差・フレーズの引継ぎが頻発する上に息が合いすぎている印象を与え、聞き手を困惑させる。言い換えると、生演奏での演奏効果と聴衆に与える驚嘆は推して知るべしである。原曲はオーケストラによる演奏で知られるが、元はピアノ連弾用に書かれた。それよりも音数を増やしながら独奏という点が、シフラの技術の凄さを伝える一曲である。最大で128分音符を含むパッセージが含まれるが、これをシフラはなんの苦もなく弾ききっている。

クセナキス

  • エヴリアリ
    中間部に、右手はC-G-C♯-G♯からの急速な下降、左手はD-A-D♯-A♯からの急速な上昇がある。共に中間音を含む増12度であり、ラフマニノフを越える程の大きな手と柔軟な指を生まれ持っていない限り譜面に沿った演奏は不可能である。手が届いたとしても途中で両手の和音が交錯する箇所があるため、弾きわけるのは至難。完全に手の届かない和音の提示も存在する。ただし、作曲者は譜面通りの演奏ではなく、譜面として提示された音響世界を演奏者がどのように解釈し再構築するかを問うている。実際、高橋アキがクセナキス本人の前で演奏し絶賛された。難曲であるにもかかわらず、世界中の多くのピアニストによって挑戦される名曲でもある。

マイケル・フィニスィー

  • イングリッシュ・カントリー・チューンズ
    桁違いに複雑な楽譜、桁違いに高度な技術を要求し、日本のテレビ局によって世界一難しいと報道されたピアノ曲。演奏の実施も難しいが、とりわけ同時進行するフレーズ間の複雑なポリリズム指定の読譜と理解は困難を窮める。例を挙げると、「ここからここまでは右手と左手のテンポは 8:5。右手の第 3 音を引き終わった直後に 6:7 とし、左手の第 6 音の後、この小節内は 9:14 で進行し、最終音は同時に打鍵する。」というような指示が毎小節に書かれているという代物である。ただ、演奏者を苦しめるためだけにこのような難解なポリリズムを指定している訳ではない。乱数表で得られた比率から生まれる新しい持続の形成のために、このような複雑な比率が用いられている。数人の全曲完奏者が生存する。

ジェルジ・リゲティ

  • 「練習曲14A 終わりのない柱」
    余りの演奏不可能さのために「プレイヤーピアノでも、生のピアニストでも、どちらでも良い」(for player piano, ad lib. live pianist)という異例の指示が出された超難曲。結局この作品を演奏する予定だったピエール=ロラン・エマールは演奏をリタイヤした。リゲティピアノ作品全集をリリースしたウッレーンですら、この作品の収録を行わなかったほどの作品だが、長さは80秒弱である。これだけの超難曲ですらジョン・オルフェ[1]と大井浩明は生演奏を行っている。録音では、イディル・ビレットがナクソスからリリースしている。

ニコライ・カプースチン

  • 「様々な音程による5つのエチュード」より第1曲「増1度」
    曲名が表すとおり、右手か左手の少なくとも一方(時には両方)が常に半音ずれた2音を同時に打鍵する。そのため譜面も異様だが、他の曲ではほとんど使わない運指を要求され、アレグロのテンポと相まって大変に難しい。マルカンドレ・アムランによる録音が存在する。

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